大地の子〈1〉 (文春文庫)
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大地の子〈1〉 (文春文庫) 定価 610円 新品 610円から 中古 1円から |
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この商品の感想
残留孤児とは
今更ですが、読んでみました。
非常に読み応えのある硬派な内容で、引き込まれて一気に
読んでしまいました。
残留孤児の主人公に幾多も襲いかかる不幸、主人公を助けた
養父母の人間性、貧困が故にエゴむき出しの貧農、現代中国
の象徴である狡猾な政治家、妥協を許さない厳しいビジネス
の内幕。
どのシチュエーションにおいても綿密な取材と膨大な資料に
よる裏付けによりリアリティーと迫力があった。
中でも共に孤児となりながら自分とは異なる悲惨な運命を
生きてきた実妹。偶然にもその妹と再会することとなり、実妹
の不幸な最後の場面で実父とも運命的な再会を果たす。
立場は異なるが、日中の巨大なプロジェクトで共に働く実の親子
の再会をどの様に描くのか、揺れ動く主人公の心情を思いながら
読み進んでいったが、なんとも皮肉な悲しい再会として描かれて
いた。
戦争によって肉親との辛い別れと異国で過酷な人生を歩まざるを
得なかった残留孤児の物語であるが、厳しい幼少時期から文革と
いう暗黒の時代を経て、ようやく掴み取った中国人としての尊厳
(?)である党員となった主人公は、最後に中国人=大地の子と
して生きていくことを告げた主人公とその言葉を聞いた実の父親
の心情を考えると複雑な気持ちになった。
人権なき世界と人間の狂気が結びついたときの恐怖
結論は納得である。やはり所変われど、「氏より育ち」である。
その意味で、「大地の子」という表現は、簡にして明瞭なメッセージである。
こう考えると、果たして、残留孤児として日本に帰国した人は、果たして幸せに生きているのだろうかと素直に疑問に思う。
しかし、最近の小説がぺらぺら薄っぺらいものに感じてしまうほど骨太の作品である。
無知で恥ずかしいが、自分の生まれた直後の時期に文化大革命が起こり、狂乱の時代が中国大陸に到来していたとは知らなかった。
また、小日本鬼子(シアオリーベンクイツ)という日本人の血を引くものへの侮蔑の言葉が耳について離れない。
普通の日本人で、文化大革命時代の中国で、自分は無傷に立ち回れると思える人はいるまい。
正直、自分の立ち居振る舞いによっては死を招きかねない時代の暗さは目を覆うばかりである(戦前の日本もこういう感じだったのだろうか)。
読んでも読んでも、ソ連軍の虐殺、妹との別れ、労改送りと、これでもかとつらい話が続き、これでハッピーエンドか期待をしても、それは空しく裏切られる。
しかし、こういう重厚な本が、安価な文庫で読めるのは至上の喜びとすべきであろう。
全体の展開を時系列で見ると、1)敗戦時の死線を彷徨う日々、2)陸徳志と暮らした日々、3)北京鋼鉄公司での活躍と暗転(労改送り)、4)上海宝華製鉄建設での活躍と暗転(大包鋼鉄公司への転属)、5)名誉回復とエンディングということになるのだろうか。
やはり、こうした果てしなくて出口のない物語で最後救われるのは、「私は、この大地の子です」という陸一心の言葉であろう。
なお、なぜこのような本の執筆が可能になったかは巻末(胡耀邦党総書記の知遇を得たこと)に示される。
日本政府のいい加減な政策に翻弄される子供たちの苦難
10年ほど前、中国残留日本人孤児の帰国問題が話題になっていた。まったく、事情を知らなかった私はなんでいまごろ日本に帰りたいのだろうと無責任に感じていた。そのころTVドラマ「大地の子」にであった。日本の移住政策、戦後の動乱に翻弄され、異国に取り残された戦争遺児たち。その苦難の人生を丹念な取材と緻密な文章で綴られていく。陸一心は教師である養父にひろわれ、教育を受け、差別を受けながらも、中国なかで出世するが、妹は奴隷のようにあつかわれ、一心と再会するやいなや死んでしまう。ほとんどの孤児はこのようにしてなくなっていったのだろう。長い苦難の人生を生き、帰国を願う孤児を暖かく迎える気持ちが日本には見られなかった。まさに棄民。日本政府のいい加減な政策で、人生を翻弄された人々は、北朝鮮帰国事業、拉致問題、南米移民など多数いる。また、現代でも医療問題、介護問題、教育制度など、朝令暮改の政策で弱者を苦しめている。
山崎豊子小説のうち最高の作品の一つ
中国残留孤児を描いた当作品は当時の悲惨な状況やその中で逞しく育っていく少年の姿に惹き込まれる。
読み進めると中国の文革がいかに近代化を遅らせたものであるかが理解できるほか、中国人の国民性がよく分かる。
中国はその是非はともかく、日本のような和を持って尊しとするような文化ではなく、やや利己主義が強い国民性であると感じた。現状の中国をみても当時のこうした様子が再現されている気がしてならない。
ある意味で日本よりも資本主義が徹底している不思議な国である現代の中国を理解するにも当作品は非常に参考となるであろう。
ボリュームのある作品であるが一読の価値あり。
ぜひ、うちの父にも読ませたい
第一巻は、感動よりもむしろ驚愕、恐怖が大きかった。幼い陸一心が養父母に連れられて疎開する途中、関所と関所の間に広がる真空地帯で、養母が蓄えていた食糧が一日にして奪われ、赤ん坊や青年の人肉が茹でられ食べられる。一心自身も獲物として狙われる・・・。
極限状態に追い詰められたとき、人はどう変わるのか?その中でも変わらなかった養父母の恩愛や、親友との友情、妻月梅との愛があるから、読んでいて救われる。目を背けたくなるような現実も描かれているけど、読んでよかった。
「養父と実父の間で揺れる青年」の物語だと聞いていたが、読み進むうち、これほどまでして育ててくれた養父母を残して、一心が日本に帰国するのは許されないのではないか?と感じていた。結末が気になって、つい途中で最終巻の最後をめくってしまった。これから読む人には、ぜひ結末は最後の楽しみにして、順番に読むことをお勧めする。
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