沈まぬ太陽〈1〉アフリカ篇(上)
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沈まぬ太陽〈1〉アフリカ篇(上) 山崎 豊子 定価: ¥ 1,680 |
カスタマーレビュー
何故女性がここまで書けるのか
「アフリカに駐在した日本航空職員の話」そんな漠然とした知識で読み始めたが、読めば読むほど驚きであった。
「労使紛争」、一時代前の事になってしまったような響きのある言葉だが、人の命を預かる航空会社では重みがある。
その中で、利権を得んとありとあらゆる画策を講じる男達。男達をここまで向かわせるものは何なのか。男の中にたぎる競争心なのか。
この小説の中では、完全な善人はいない。善人役も、多分企業人の目で見れば欠点があり、そこがリアリティの基ともなっている。
企業の中での利権争い、政治の中での利権争い、企業論理の中で軽んじられる人道。
そういったものを目の当たりにさせる。
この小説は、企業に勤めた事のある人間なら、男女問わず是非読んでみて欲しい。貴方の勤める企業にも大なり小なり見出せる事だろう。
J○Lの実態がこんなにあらわに
恥ずかしながら、山崎豊子さんの作品を読んだのはこれが初めてである。
航空機ファンなら誰でも引き込まれる超大作。
飛行機マニアでなくとも、御巣鷹山といえば分かる航空会社を設定に
組織内部の醜い争い、安全を度外視した実態、顧客不在の労働組合、そして経営不安・・・。
現在の株価も納得できるというもの。
それにしても筆者はよく、ここまで取材したなと思う。
一気に5冊を読んも、飽きなかった大作。
不条理とは
実在の航空会社(JAL)をもとにした、企業の不条理とそれに立ち向かう男の物語。
「この作品は、多数の関係者を取材したもので、登場人物、各機関・組織なども事実に基き、小説的に再構築したものである。」と冒頭に記されていますが、事実に基づいているものとそうでないものがあります。モデルが存在するはずの主要登場人物、恩地元は小倉寛太郎氏ですが、行天四郎は架空の人物。事実関係においては、小倉氏は勝手に労組委員長にされたのではなく、本人の了承のもと委員長就任要請を受けていますので、実際は不条理ではありません。作品自体はとても楽しめましたが、「〜事実に基づき〜」と冒頭で訴えることにより、リアリティを増す手法は、読者への不条理ではないのでしょうか。
事実関係については、鵜飼清『山崎豊子問題小説の研究』、『週刊朝日』2000年2月11日号、2月18日号が詳しいです。「現代の俊寛」こと主人公恩地元のモデル小倉寛太郎氏については、佐高信・小倉寛太郎『企業と人間』がお薦めです。
精巧なジオラマの様。。。
全五巻、一気に3〜4日で読み終えてしまった。
最初は、薄っすらと記憶に残るあの暑い夏に飛び込んできた日航機事故のニュース。
それに喚起されて順序通りアフリカ編から読み始めた。
未だ子供だった時分には、恐ろしかったTVの光景がどこか非現実的で、大きなショックを覚えた。
そんな悲惨な事故をモチーフにした小説…と、ある意味避けてきたのだが、肯定派が多く居る事も事実、「白い巨塔」「華麗なる一族」ブームに乗った知人に勧められて気になっていた本書を先に開いてみたのだ。
登場人物にモデルが居て偏った視点から描かれる事や、強烈な取材敢行など、色々と噂の多い作者の作品だが、大げさに言えば、いつの時代にも、その時代を代表する企業には恥部や汚点もあり、端から見た眼と真実とは異なるのだろう。
ただ、本作はそんな事を横に置いて、誰でもが知っている事故の起源となる人災を、精巧に且つ魅力的に描く事で読者を引き込んでしまう作品に仕上がっている。
事実を基にしている分、不快な感情を持つ方も居ると思うが、自分の職場や生き方で同じ過ちを繰り返さない様にしたい方など、「処方」に考慮してお読み下さい、是非。
気骨の士
同一人物の来し方を年代順に3部作とする試みは成功している。アフリカ篇、御巣鷹山篇、会長室篇のどれを取っても読み応えがある上、それぞれがシナジー効果をもたらし、主人公恩地の人間性醸成の描写を深化させている。高度成長期を終えた現在の日本で、節を全うするためとはいえ組織人としての枠内でこれほどまでに耐え忍ぶ生き方は風化しつつあるが、作品は失ってはならない「人間としての気骨」とは何かを教えてくれる。最終章は恩地にとって失意の旅立で結ばれるが、細井メモからは窺い知れない人物にまで検察の捜査が進んでいることを窺わせ、会社を食い物にしてきた上層部だけでなく、政官財界を巻き込んだスキャンダルが目前に迫っていることを暗示している。面白い終わり方であると同時に、恩地ら気骨の士たちの願いが天に届くかのようで、感情移入している読者は救われる思いがする。読後、高級なフルコースを味わった時のような余韻が持続する。素晴らしい作品である。
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